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カスタマーハラスメント
令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策を事業主の雇用管理上の措置義務とすることとなりました。
具体的には、労働施策総合推進法の第33条に上記義務が事業者に課せられています。
法律の中身を見てみましょう。
第1項では、要約すると、「事業主は、顧客等の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境が害されることが無いように、必要な措置を講じなければならない。」となっています。
この内容を詳しく解説するものとして、厚生労働省が、令和8年9月8日に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」をだしているので、参考になります。
このマニュアルの中では、「社会通念上許容される範囲を超えた」という類型を「言動の内容」と「手段や態様」の二種類に分けています。
言動の内容として挙げられているものとして、「そもそも要求に理由が無いまたは商品・サービス等と全く関係のない要求」「契約等により想定しているサービスを著しく超える要求」「対応が著しく困難な又は対応が不可能な要求」「不当な損害賠償要求」があげられています。
手段や態様の例としては、「身体的な攻撃(暴力)」「精神的な攻撃(脅迫・誹謗中傷・土下座強要など」「威圧的な言動」「継続的・執拗な言動」「拘束的な言動(不退去など)」があげられています。
このカスハラ行為に対して、企業に対策をするよう求めています。
あくまでも、企業がカスハラ対策をするように義務付ける法律ですので、この法律から直ちにカスハラをする顧客等に罰則が与えられるわけではありません。
しかしながら、顧客等が、上記カスハラ行為を労働者に対して行うことは、その労働者に対する不法行為を行っていると主張しやすくなるような印象を受けます。
従来は、顧客等のどのような行為が法的に否定されるのかが明確ではなかったため、顧客等の行為が犯罪行為に発展しない限り、企業側としてもカスハラ行為に対処しづらかったように思います。
今回の法律の施行で、カスハラの概念が明確化されているので、企業としてもカスハラ加害者に対し、法的に対処しやすくなるのではないかと感じました。
企業側が適切な顧客対応をとることは当然のこととはいえ、カスハラに該当するような不当・悪質なクレームは、顧客側も行ってはならず、企業側・顧客側双方に、適切な対応が求められる法律だと思います。
企業の方が、カスハラに該当するか否かに迷われるようであれば、お近くの弁護士に相談されることをお勧めします。
道路交通法改正
弁護士として、交通事故案件を多数扱うので、道路交通法の改正についても気になります。
令和8年9月1日に、改正道路交通法施行令の施行により、法定速度に変更がありました。
今までは、道路交通法施行令第11条で
「・・・・道路を通行する場合の最高速度は、自動車にあっては60キロメートル毎時、原動機付自転車にあっては30キロメートル毎時とする。」
とされていました。
これが、改正により、次のように変更されました。
「・・・・一般道路を通行する場合の最高速度は、自動車にあっては次の各号に掲げる一般道路の区分に応じ当該各号に定める速度、原動機付自転車にあっては30キロメートル毎時とする。
1 次に掲げる一般道路 60キロメートル毎時
イ 高速自動車国道のうち、本線車道並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外のもの
ロ 自動車専用道路
ハ 道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている一般道路
ニ 道路の構造上又は柵その他の内閣府令で定める工作物により自動車の通行が往復の方向別に分離されている一般道路
2 前号に掲げる一般道路以外の一般道路 30キロメートル毎時」
このように規定されるようになったので、速度の規制標識が無い道路でも、センターラインや中央分離帯が無い道路では、時速30kmが最高速度とされるようになりました。
最高速度が低くなっているので、運転には注意してください。
しかし、今回の改正に際し、ニュースなどでは「生活道路の法定速度は時速30kmです」と報道され、警察の広報でも同様に表記されていたことが、すごく違和感がありました。
なぜならば、道路交通法施行令上は、「生活道路」という定義はどこにもなく、「一般道路」と定義のみ存在しており、法律に定義されていない言葉で、あたかも最高速度が決まっているかのように表現されていたからです。
この「生活道路」という言葉がどこからきているのかが分からなかったので、調べてみたのですが、よく分からない状況です。
国土交通省関係のホームページでは、生活道路という言葉がよく使われています。
また、衆議院の内閣委員会(令和7年5月14日)では、「主として地域住民の日常生活に利用される生活道路であり、中央線などが無い道路を想定している」と大臣が答弁していました。
政府広報オンラインの2026年6月1日付では、「主に道幅5.5m未満の生活道路」と記載されていました。
このように、正確な定義がよく分からず、あいまいな「生活道路」という言葉を用いて最高速度を理解することは望ましいとは言えません。
ちなみに、マスコミや警察の広報のように「生活道路は時速30km」と理解することの弊害は次のとおりです。
例えば、地域住民の日常生活に利用されていない交通量の少ない山奥の道で、道幅が7mほどあるセンターラインも中央分離帯も無い、速度規制標示も無い道路のケースだと、「生活道路」という定義には該当しないと思います。
しかし、道路交通法施行令上では、第11条2号の「前号に掲げる一般道路以外の一般道路」に該当するので、時速30km制限に該当します。
そうすると、交通違反を指摘されることになります。
生活道路か否かではなく、施行令11条2号の一般道路か否かで判断する必要があり、法律の理解は正確にしておく必要があります。
(半分冗談ですが、「生活道路」といってアナウンスすることは、何かの罠ではないかとも疑いたくなります。)
同僚災害?
弁護士として、交通事故のご相談を受ける際、次のような2つの事例に出くわす場合があります。
次の2つの相談で、一方では対人賠償保険が使えて、もう一方では対人賠償保険が使えないとされます。
なぜ、このような違いが生じるのでしょうか?
(バスの任意保険には、対人賠償保険はついているが、人身傷害保険の加入は無かったとします。)
1つめは、公共交通機関が無く不便な場所にあるX社が、従業員の送迎のために、自社のマイクロバスを運行していたが、同じ会社の従業員であるマイクロバスの運転手が運転操作を誤り、電柱にぶつかるという自損事故を起こしたため、従業員Aさんが怪我をしたケースです。
2つめは、公共交通機関が無く不便な場所にあるY社が、従業員の送迎のために、バス会社に依頼して通勤バスを出していたが、バス会社の運転手が運転操作を誤り、電柱にぶつかるという自損事故を起こしたため、従業員Bさんが怪我をしたケースです。
Aさんも、Bさんも、通勤中にバスに乗っていたら、バスの運転手の操作ミスで自損事故が発生したという点では違いはありません。
しかし、Aさんは、バスについている任意保険の対人賠償保険が使えない可能性があります。
しかも、人身傷害保険の加入が無いため、任意保険会社の対応を受けられません。
一方、Bさんは、バスについている任意保険の対人賠償保険が使える可能性があります。
この違いは、同僚災害事案に該当するので、任意保険の免責事由に該当しているということから発生しています。
任意保険の対人賠償保険には、「被保険者の使用者の業務に従事中の他の使用人」が免責されるという免責規定があります。
この免責規定は、業務中の事故により従業員が受けた損害は、労災などで対応するという前提で規定されているようです。
この免責規定が原因で、AさんとBさんで、任意保険会社の対応に違いが出てきます。
Bさんは、任意保険会社が治療費などを支払ってくれることで問題なく治療を受けられるのに対し、Aさんは任意保険会社が出てこないので、治療費を自己負担するか、会社に対して、労災を利用できるように掛け合う必要があります。
会社の送迎バスが、自社のマイクロバスか、バス会社のバスかについては、従業員がコントロールできるわけではないので上記の不利益を防ぐ方法は無いですが、Aさんのような立場になった際は、治療費を払ってもらうために、労災を利用するということを覚えておくとよいと思います。
なお、「Aさんの慰謝料はどうなるのか?」という点ですが、労災保険からは慰謝料は出ません。
X社の従業員であるバスの運転手が、Aさんを怪我させたということから、Aさんは、X社に対し、使用者責任(民法715条)を追及して、慰謝料請求をすることになると思います。
但し、Aさんの勤務先であるX社に慰謝料を請求していくのは、気まずいと思う人も多いと思います。
(また、Aさんは、バスの運転手に対しても慰謝料を請求できますが、個人の資力の問題で、個人から慰謝料の回収できる可能性があるか疑問です。)
なお、同僚災害に該当し、免責事由に該当するかどうかは難しい問題であり、名古屋地裁平成26年10月30日(自保ジャーナル1953号151頁)では、会社が専用の交通機関を従業員の通勤のために用意していたことを踏まえて、「業務に従事中」と判断しています。
上記の具体例でも、あえて「公共交通機関が無く不便な場所」としましたが、単純化できる問題でもないので、実際に問題が生じた場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。
酷暑日
本日、岐阜県の郡上八幡市で40.0℃が観測されたというニュースを見ました。
「酷暑日」という言葉が気象庁によって定義付けされてはじめての酷暑日だそうです。
なお、この酷暑日という言葉は、法律用語ではありません。
気象庁が、最高気温が40℃以上の日の名称に関して、令和8年2月27日から3月29日にかけてホームページ上でアンケートを取った結果、決めた用語です。
もっとも、2022年以降、日本気象協会において最高気温40℃以上の日を指す言葉として酷暑日という言葉は使われていたようですので、それほど違和感はありません。
では、酷暑日という言葉は法律用語ではないとして、暑さに対応が求められる法律は無いのでしょうか?
弁護士の業務でもしばしば出てきますが、労働安全衛生規則という規則に暑さ対策が規定されています。
令和7年6月1日から労働安全衛生規則が改正されて、企業に対して、熱中症対策が義務化されています。
厚生労働省が示している具体的な内容としては、
1 熱中症の自覚症状がある作業者や、熱中症の恐れがある作業者を見つけた人が、そのこ とを報告するための体制整備および関係作業者への周知
2 熱中症の恐れがある労働者を把握した場合に、迅速に対応するための緊急連絡網の整備や作業を止めさせたり体を冷やすなどの熱中症重篤化防止策などといった必要な措置の実施手順の作成及び関係者への周知を挙げています。
対象となる作業は、暑さ指数WBGT28度以上又は気温31℃以上の環境下で、連続1時間以上又は一日4時間を超えて実施が見込まれる作業であるとのことです。
暑さが深刻化する中、熱中症対策については昨年から企業で義務化されるほどに重要事項になってきています。
また、暑さ対策としては、仕事現場だけでなく、教育現場においてもガイドラインが策定されています。
こちらは、文部科学省により、令和3年5月にガイドラインが作成され、令和6年4月に改訂されています。
内容としては、暑さ指数WBGT31以上だと原則としてすべての運動、屋外活動を中止するとなっているようです。
今後、酷暑日が多くなるにつれて、夏においては、教育現場でもすべての運動、屋外活動が中止されるという事態が常態化するかもしれません。
部活動を頑張っている学生・生徒の方にとっては残念なことかもしれませんが、熱中症は生命にかかわることなので、夏場の運動・屋外活動は控えざるを得ないと思います。
夏の暑さが生命にかかわり、法律や社会生活まで変わっていく状況を踏まえると、異常気象が人間生活を脅かしつつあるなと感じます。
強盗事件
最近、ニュースを見ていると、匿流による強盗事件が多数発生していると報道されています。
その影響か否かは分からないですが、銀行強盗を題材としたアメリカ映画の劇場公開が中止されるというニュースも見かけました。
この、強盗という罪について検討しようと思います。
刑法236条で強盗罪という罪が定められており、暴行や脅迫を用いて、他人の財物を強取したものは、5年以上の有期拘禁刑に処するとされています。
イメージがつきやすいものとしては、ニュースでもありましたが、金塊という「財物」を運んでいる人に対して、路上で殴り掛かって(「暴行を用いて」)、その人を反抗できない状態にして金塊を持ち去るというケースです。
これは、比較的分かりやすいと思います。
では、スーパーでパンを万引きをして、店を出ようとしたところ、警備員から声をかけられたので逃げようと思って、警備員を殴って逃げた場合はどうでしょうか?
この場合でも事後強盗罪(238条)という罪があり、強盗罪と同じ扱いをされる可能性はあります。
たまに、上記のようなケースで強盗罪で捕まったというニュースが流れているので、注意してニュースを見ていただけると良いかもしれません。
(もっとも、最終的な判断として、事後強盗罪になるのか、窃盗罪+暴行罪になるのかなど、様々な議論がありえます。)
強盗罪は、重大な結果を及ぼす犯罪ですので、その準備行為を予備罪として処罰の対象としています。
そのほかに予備罪がある犯罪は、殺人や放火など重大な犯罪に設けられています。
強盗罪には予備罪があるので、「強盗の準備だけで、実際には、まだ強盗をしていないから大丈夫」とはなりません。
最近も、冒頭に記載した匿流による強盗事件に関連して、強盗予備罪で逮捕されている事案は増えてきているようです。
強盗予備罪でも2年以下の拘禁刑という比較的重い罰が課せられているので、くれぐれも安易に強盗に加担するような行動はとらないようにしてください。
万が一、強盗に加担してしまって逮捕された場合には、弁護士に依頼することになると思います。
しかし、闇バイトなどには関わらないことが最善ですし、弁護士に相談・依頼をしないで済むのが一番良いと思います。
刑事訴訟法改正
本日、再審制度を見直す刑事訴訟法の改正法案が閣議決定されたというニュースを見ました。
ここで、出てくる「刑事訴訟法」や、「再審制度」というものは何でしょうか?
まず、刑事訴訟法という法律は、刑事裁判を行うための手続きを定めた法律です。
具体的に説明します。
「人を殺した場合は、死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑に処する」と、定めている法律は刑法です。
しかし、①人を殺したと指摘されている人が、本当に人を殺したのか?②その人が、本当に人を殺したとして、どれくらいの刑罰を科すべきなのか?という点については、刑事裁判で判断する必要があります。
この刑事裁判を行うにあたっての手続き上のルールを定めているものは、刑事訴訟法です。
(厳密にいうと、裁判が始まる前の警察・検察の捜査段階の手続も定めているので、刑事裁判のルールというのは若干不十分です。)
今回、刑事裁判を行うにあたっての手続き上のルールの改正として、「刑事訴訟法」の改正が行われることになりました。
次に、「再審制度」とは何でしょうか?
刑事裁判というものは、3審制がとられており、第1審の裁判・控訴審の裁判・上告審の裁判と3回審理を行うことが制度上予定されています。
(もっとも、控訴審・上告審の裁判が、充実して行われているかというと疑問です。)
この3回の審理を行い、判決が確定した場合でも、えん罪防止のために、再審制度という特別の制度が設けられています。
しかし、この再審制度の関する規定は、いままでの刑事訴訟法にも定められていたのですが、条文数が19条しか無く、具体的にどのように審理して判断するのかという手続きの進め方についての規定がありませんでした。
法律の条文が無いので、手続きの進め方については、裁判官それぞれの判断によって進められてきました。
一見すると、裁判官が判断するのだからいいじゃないかと思いそうですが、これは怖いことです。
裁判官は、法律に縛られて判断するから、その判断は法律の裏付けがあるものとして、(不満があっても)受け入れられるのだと思います。
それが、法律の裏付け無く、裁判官それぞれの判断のみに委ねられるとしたら、その正当性はどのように担保されるのでしょうか?
これまでも、担当裁判官次第で、再審裁判は、大きく揺れ動いてきました。
再審に積極的な裁判官であれば再審が前進し、消極的な裁判官であれば再審が後退するといった事態が現実に起こっていました。
そこで、このような裁判官の当たりはずれで再審裁判が左右されているのは不適切だということで、再審手続きに関する法改正が行われることになりました。
今回、最も話題になったのが、検察官の抗告禁止の点ですが、これは、今までの再審裁判でも、検察官が不必要と思われる抗告を繰り返して、再審裁判を長引かせてきたことを踏まえています。
再審に取り組まれている弁護士の方は、検察官の抗告が、極めて不誠実だと感じているので、この点は譲れない点であると思います。
しかしながら、今回の検察官の抗告禁止についても、原則禁止とされているだけで、全面禁止となっていないようです。
条文の詳細が報道ベースではわからないのですが、再審の開始決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合に限り、抗告できるという条文が入っているようです。
そうすると、「取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある」か否かの点で、抗告をして審理を長引かせる可能性は否定できないと思います。
今後の、衆議院・参議院で、さらなる議論が尽くされることで、よりよい刑事訴訟法になるとよいと思いました。
ちなみに、私が所属する愛知県弁護士会でも、今までにも再審制度に関する声明が出されていますので、興味のある方はご確認ください。
ブログをリニューアルしました。
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今後は、こちらのブログを更新していきます。 旧ブログも残していますので、よろしければそちらもご覧ください。
旧ブログはこちら
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